代表取締役 社長執行役員 小林 喜夫巳

 株主・投資家の皆様には、日頃より格別のご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。私が社長に就任してからの1年間、新しい視点、大胆な発想で当社グループの改革を進めるために、各部門の責任者はもとより、最前線で働く社員、FC加盟法人の方々、お客様、投資家の方々など、幅広いステークホルダーの皆様との対話に努めてきました。

 そうした対話の中から、当社グループを取り巻く環境変化や、当社グループに寄せられる期待感などを肌で感じるとともに、そこから多くの“気付き”が得ることができました。

 なかでも痛感したのが、かつてのオートバックスにあった“ワクワク感”が、社内からも、お客様からも失われつつあるという危機感です。この“ワクワク感”をいかに取り戻すか。そのための道筋を示したのが、今回新たに策定した「2017中期経営計画(2018年3月期~2020年3月期)」に他なりません。

 この新計画のもと、私たちはカーライフの未来を提案する魅力あふれるオートバックスを創造し、皆様のご期待にお応えしていきます。今後とも、変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

Q12017年3月期の
業績に対する評価を
お聞かせください。

厳しい業績となりましたが、新たなスタートを切るに
ふさわしい体質づくりができた一年と考えています。

 当期の当社グループの連結業績は、売上高が前期比2.0%減少の2,040億円、営業利益は同13.0%減少の58億円、親株主に帰属する当期純利益は同31.0%減少の30億円となりました。

 減収の主な要因は、国内店舗における「カー用品販売」の売上が前期比2.0%減少したことによります。前期の記録的な暖冬の影響で、冬用タイヤから夏用タイヤへの交換需要が減少するなど上期の売上が低迷しました。下期には冬季商品の需要増加を見込み販売促進策を強化した結果、タイヤ・オイル・バッテリーを中心に売上が回復したものの、上期の減収を補うに至りませんでした。また、FC加盟法人の店頭在庫の効率化を徹底したため、チェン全体の卸売を担う当社単体の売上が減少したことも減収に影響しています。

 利益面では、減収の一方で国内店舗子会社の収益改善の取り組みが進み、売上総利益は前期比1.2%の減少、売上総利益率は同0.2ポイント改善しました。販管費については、ロジスティクスセンターの改修に伴う減価償却費の増加があったものの、広告宣伝や販売促進の見直しにより前年並みに抑制しましたが、営業利益は減益となりました。また、福利厚生施設や店舗の土地・建物の固定資産減損損失などの特別損失26億円を計上したことも、純利益減益の要因となりました。

 このように業績面では残念ながら厳しい結果となりましたが、2018年3月期より新たな中期経営計画をスタートするにあたり、課題を明確化し、次につながる成果を収めることができた1年だったと感じています。

 とりわけ、FC加盟法人の在庫圧縮が進み、課題であった国内店舗子会社の収益改善が進展し黒字化するなど、チェン全体でスリムな体質を築くことができたのは大きな成果と捉えています。また、成長分野として注力してきた「車検・整備」「車買取・販売」については、施策の浸透に加え、テレビコマーシャルの全国展開による認知度向上も寄与し、いずれも成長を継続しています。「カー用品販売」においても、ドライブレコーダーなど注目度の高い商品の品ぞろえ強化や、アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故を防止する「ペダルの見張り番」をはじめとした“安全・安心”に寄与する商品の販売拡大など、手応えを感じられる分野もありました。こうした取り組みは新計画においても強化すべき点となりますが、一定の基礎固めが進められたと考えています。

2017年3月期の連結業績

(単位:億円)

  2017年3月期 前期比
売上高 2,040 △2.0%
営業利益 58 △13.0%
親会社株主に
帰属する
当期純利益
30 △31.0%
ROE(%) 2.8 △0.9pt

国内オートバックスチェン店舗売上高(全業態)

(単位:億円)

  2017年3月期 前期比
カー用品販売 2,098 △2.0%
車検・整備 183 +6.0%
車買取・販売 292 +9.6%
その他 46 +6.0%
全店合計 2,620 △0.2%

※FC加盟法人店舗の売上を含む

Q2業績の回復に向け、現状の課題認識をお聞きかせください。

国内オートバックス店舗における来店客数の減少が課題であり、
お客様視点で店舗の魅力を高めていくことが最優先のテーマです。

 国内オートバックスチェン全体の現状として、店舗の売上が減少傾向にありますが、その背景には来店客数そのものの減少があります。とりわけこの10年間で20代、30代の会員比率が低下しており、若年層やファミリー層のお客様の取り込み不足は、中長期的に見ても大きな課題です。

 これは、日本社会全体の高齢化、嗜好の多様化による“若者のクルマ離れ”などのマクロ動向や、カーディーラーやネット販売関連企業など異業種との競争激化といった環境要因だけでなく、変化するお客様の嗜好やライフスタイルに対して私たちが魅力ある商品・サービスを提案できていないためだと捉えています。また、ネット販売やSNSが普及するなか、来店を促進していくためには、プロモーション手法も多様化していく必要があります。

 こうした認識のもと、当社グループが最優先で取り組むべきは、商品・サービスを含めた店舗全体の魅力を高め、お客様にもっとご来店いただくこと、一言で言えば「国内オートバックス事業の競争力再生」です。当社グループを取り巻く経営環境は、自動車の電動化・電子化、シェアリングエコノミーなど新たな市場の拡大、女性や高齢者ドライバーをはじめとする顧客構成やニーズの多様化など、今後も大きくまた急速に変化することが予想されます。こうした変化を成長機会とするためにも、お客様視点で提供価値を明確化し、競合との差別化を実現していくことが何よりも重要です。

過去10年のオートバックスチェン全店の売上高と来店客数

Q3競合との差別化の実現に向け、オートバックスが目指す姿を教えてください。

ライフスタイル提案型小売業への転換を通じて、お客様にとって
「プロフェッショナル」で「フレンドリー」な存在を目指します。

 「国内オートバックス事業の競争力再生」に向けて、私たちが目指している方向性のひとつが「ライフスタイル提案型小売業への転換」です。これまで注力してきた車検・メンテナンスを軸とした価値提供に、ライフスタイル提案という新たな軸を加え、その両面から来店客数の拡大を図ります。

 私たちの考えるライフスタイル提案とは、「クルマのある生活を楽しく、豊かにすること」です。クルマは単なる移動手段ではなく、旅行やドライブを楽しんだり、家族や仲間とともに過ごしたりと、暮らしのシーンをさまざまに彩るものです。お客様に、そうした時間をより豊かに、楽しく過ごしていただくためには、どんな商品・サービスが必要かを考え、創造し、提案していく――これこそがオートバックスの役割であり、魅力だと考えています。

 私たちが取り扱うカー用品は、車内アクセサリーやインテリア、カーナビゲーションなど「嗜好品」と、タイヤ、オイル、バッテリーなど「必需品(消耗品)」に大別されますが、大切なのは双方のバランスです。「嗜好品」はより楽しく、つい店舗に寄ってみたくなるような商品を揃える一方、「必需品」については、お客様が購入するための面倒をできるだけ減らして利便性を高めるような取り組みを強化していきたいと考えています。

 このような取り組みから生まれる新しい魅力を、より多くのお客様にお届けするために、オートバックスチェンは「プロフェッショナル」で「フレンドリー」な存在を目指していきます。お客様から「クルマのプロフェッショショナル」として安心・信頼されると同時に、「フレンドリー」な存在として親しまれ、何でも相談していただける。そんな店舗であり、スタッフであり続けることで、お客様とのつながりを強め、何度も店舗に足を運んでいただける関係を築いていきます。

Q4新たな中期経営計画のポイントを教えてください。

「国内オートバックス事業の競争力再生」「将来の成長ドライバーの育成」
「コスト構造改革」により、新たな成長に向けた基盤を築いていきます。

 「2017中期経営計画(2018年3月期~2020年3月期)」は、先述した「国内オートバックス事業の競争力再生」と「将来の成長ドライバーの育成」に重点的に取り組むとともに、コスト構造改革を推進することで、早期の収益改善を図り、中長期的な成長の基盤を築いていきます。成長の通過点として最終年度の2020年3月期には、連結営業利益120億円、連結ROE7%を目指します。

 国内オートバックス事業では、ライフスタイル提案に向けて「お客様を知る」「商品・売り方を変える」「お客様との接点を変える」3つの視点から、具体的な施策を展開していきます。

 「お客様を知る」ために、お客様のニーズや購買行動を分析し、魅力ある提案を行うためのマーケティング施策を展開していきます。新たな取り組みとして、2017年3月にカルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)の子会社と合弁でABTマーケティング(株)を設立しました。両社の会員データを分析し、地域、車種、年齢、性別などの属性にあわせたプロモーショーションを展開することで、顧客層の拡大・深耕を進めていきます。

 また「商品・売り方を変える」ために、新たな商品開発を積極化します。お客様のカーライフの多様化を踏まえ、アウトドア、インテリア、ガレージなど、さまざまなテーマで“楽しさ”“豊かさ”を提案していきます。その一環として、2017年6月には、クルマを通じたライフスタイルを提案する日本初のプロダクトブランド「JACK&MARIE」を立ち上げました。「JACK&MARIE」はオートバックス店舗とは独立した業態で展開しますが、「JKM」「GORDON MILLER」といったセカンドブランドをつくり、オートバックスチェンの既存業態に商品を導入していきます。「安全・安心」や「新たなカーエレクトロニクス、IoT関連」など、技術 class="indentHalf"の進化による新しい商品の提案にも力を入れていきます。

 「お客様との接点を変える」業態開発では、ライフスタイル提案にふさわしい世界観と雰囲気をもった店舗づくりを進める一方で、洗車を入り口にした店舗や予約専門店など、お客様にとって必需品を購入しやすい店舗をローコストで展開し、お客様との接点を増やしていきます。

 さらに、店舗の収益基盤強化に向けて、「車検、車買取による安定的な収益構造の構築」「店舗運営の省力化」「コストの効率化」などにも注力していきます。

Q5将来に向けた成長ドライバーについての考え方を教えてください。

「新規事業」「海外事業」の強化を進め、
新たな成長の柱となる事業に育てます。

 中核事業である国内オートバックス事業が連結売上の9割近くを占める当社グループにとって、将来の成長ドライバーの育成は重要なテーマであり、その担い手となるのが「新規事業」と「海外事業」です。

 新規事業は、特に「車買取事業」と「BtoB事業」を将来の柱として重視しており、人材の再配置も含めて、事業の強化を図っていく考えです。

 車買取事業は、2016年3月に初出店し、現在9店舗となる車買取専門店を、新規事業として位置づけ、積極展開するものです。オートバックス店舗の少ない都市部において、居抜き物件を利用し初期投資を抑えながら出店を加速していきます。

 また、新たな取り組みであるBtoB事業は、当社の取り扱い商品を、国内店舗子会社やFC加盟法人だけでなく、ホームセンターやディスカウントストア、整備業者、中古車販売店などに卸売するものです。これにより販売機会を広げるとともに、販売数量の増大による商品原価の削減を通じて、国内オートバックス事業とのシナジーを追求していきます。

 海外事業については、引き続きASEAN地域を中心に、各国・地域の販路やニーズにあったビジネスモデルを構築していきます。その一方で、小売・サービスだけでなく卸売事業も展開することで、BtoB事業と同様にスケールメリットの拡大につなげていきます。

※2018年3月期第1四半期より報告セグメントとして「車・ディーラー・BtoB事業」という名称にしています。

Q6中期経営計画の実行力を高めていくために重視する点を教えてください。

組織力の強化に加えて、
お客様との接点となるスタッフの育成を重視しています。

 中期経営計画に掲げた各施策の実行力を高めていくためには、基盤となる組織力の強化が不可欠です。そこで、2017年4月に統括執行役員制度を導入し、推進体制の強化と実行スピードの向上を図るとともに、グループのコスト構造改革の牽引役として、新たにコーポレート機能を統括する執行役員を設置しました。

 また、オートバックスがお客様にとって「プロフェッショナル」で「フレンドリー」な存在となるためには、従業員一人ひとりの意識づけと意欲の向上が重要となるため、引き続き人材の育成と活性化に注力していきます。

 その施策の一環として、2017年3月に(株)チェングロウスを設立しました。同社は今後、整備士養成施設における教育と、チェン内への整備人材の派遣、FC加盟法人に対する人材コンサルティングなどを担っていく計画です。また、活躍する人材を称揚する風土づくりのために、3月にはお客様の声をもとに、お客様応対に優れた店舗・スタッフを表彰する「オートバックスアワード」を開催しました。オートバックスブランドを支えるのは現場であり人材です。今後も働きがいのある職場環境の実現に向け、きめ細かな施策を展開していきたいと考えています。

Q6最後に、株主・投資家の皆様に向けたメッセージをお願いします。

これからのクルマ社会に向けて、
新しいワクワクを提案していくオートバックスにご期待ください。

 「2017中期経営計画」の前半2年間は、新しいオートバックスを創造するための「種まき・育成フェーズ」と位置づけており、その先にある「収穫フェーズ」において大きな飛躍を果たすための魅力づくり・基盤づくりに努めます。

 5年後、10年後は、電気自動車の普及や自動走行の実現など、カーライフがこれまで以上に変化していきます。そうした新しいクルマ社会における、新しいカーライフを提案していくのが、当社グループの役割であり、成長機会でもあります。

 オートバックスには、時代を先取りしたカーライフ提案によって成長を実現してきた歴史があります。今では当たり前となっているカーナビゲーションにいち早く着目し、まだ高額だった頃から積極的に提案したのが当社であり、それゆえ、低価格化が進んで普及し始めると、多くのお客様に購入先として選んでいただけたのです。

 このように、未知のモノにチャレンジし、自ら市場を創造していくのが、オートバックスのDNAであり、そうした取り組みを通じて、スタッフ一人ひとりがワクワクし、お客様にもワクワクを提供してきました。これからのクルマ社会においても、いち早く新たな提案することで、確かな成長を実現し、その成果を株主・投資家の皆様に積極的に還元していく所存です。

 株主・投資家の皆様におかれましては、引き続き当社グループへのご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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